定義はいらない
6月も中旬になり

病棟内にも太朗ちゃんの異動の話が明るみになってきた。

相変わらず、太朗ちゃんと話す機会はなかった。

2人きりになるタイミングもない。

なぜあの頃はあんなに2人きりになる時間がたくさんあったのだろう。

今は私は遠くから太朗ちゃんが若い女医に講釈を垂れているところを

唇を噛みながら見ていなければならない。


プレゼントの件から私と松木先生の距離は縮まり

相変わらず電話は3日間に1回くらいしていた。


私は薬も飲まずに眠れるようになっていた。

不倫前のように

日付の変わる前に眠くなり

太陽とともに起きることがこんなにも気持ちがいいものとは。

食欲も戻り、体重も戻った。

健康だった。

食欲も睡眠欲も満たされた。

そして性欲は松木先生が満たしてくれた。


あとは、太朗ちゃんとのことが唯一引っかかっていた。

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