定義はいらない
「百合ちゃんの友達ってことはあれだ、看護師さんだ。」

「だからナース服。」

「あれは、良かったね。」

「あれ着る時に意見が分かれてね。
 うちの制服にブルーとピンクがあって、
 実はブルー派が多かったの。」

「杏子がピンクにしようって言ったんだよねぇ~。」

高橋君の横で飲んでいる沙織が会話に入ってくる。

「いや、それはピンクでしょ。」

「だよね?」

「杏子ちゃん、男心を分かってるねぇ。
 間違いない!ピンク!」


会話が弾むと私の胸も弾む。

女子会ではあまりしないけど進んで周りの空ジョッキを片付けちゃう。


その後はお互いの仕事を質問し合った。


高橋君は大手の商社マンで品川に住んでいた。

家賃18万円のマンションに一人で住んでいるという。


「悔しいなぁ。」

「え?」

「私、夜勤もしているのに
 その半分の家賃の狭いアパートに住んでるんだよ。
 場所も西日暮里だし!正反対だね。」

「はは、お金貯まらないよ。それに引っ越すと思う。」

「なんで?」

「だってお金貯まらないもん。身分不相応だしね。」

「へぇー。」

「引っ越す前に遊びに来ていいよ。」

「え?」

「あんなハイソな所もう住めないもん。」

「行ってみたいかも。」

「来なよ。」



社交辞令として受け取った。

こういう出会いは今夜限り。
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