定義はいらない
仮面カップルの交際はそれから半年間続いた。


お互いの友達の存在がなければもう少し早く終わっていたかもしれない。

別に新婚夫婦に何かを言われたわけではなかったが

それでも多少の足枷にはなっていたと思う。



半年間の終止符は亮ちゃんが打った。


夏が終わり

秋を迎え始めた頃

1ヶ月後には私の誕生日を控えていた。


最後のデートは浅草寺。

まさにお陀仏。

隅田川を眼下にした橋の下で

唐突に亮ちゃんが切り出したが、私は驚かなかった。

今日のデートでは手も繋がなかった。



「付き合ってからそんなに日が経ってないのに
 そんなに会いたいと思えないのは可笑しい。
 もっと、杏ちゃんのこと好きになれると思ってたから。」



全て分かっていた。それでも付き合っていたかった。


亮ちゃんのことが好きなのか

ただ彼女でいたかったのか


私には判別がつかなかった。



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