定義はいらない
「ここに来たの初めて?」

「当たり前じゃないですか。」


この人は私が軽い女だと思っている。

だから、気楽に抱いてくれる。


「他の医者に呼ばれたりしなかった?」

「しない。」


彼は立ち上がってベッドに寝転ぶ。

「来なよ。」


そう言って私の手をとる。

強力な引力で私は引き寄せられる。

ずっと離さないでいて欲しい。

この磁気をずっと放ち続けてくれればいいのに。


彼の手が私のナース服のワンピースをまくし上げる。

「ストッキング履いてるから。」

「声出さないで。壁薄いから。」

そう言って彼は私の口唇に指を当てる。


ワンピースをまくし上げてストッキングを破る。

ビリビリ。


笑いを堪えて枕に顔を押し当てる。


すぐ近くの師長室にはまだ師長さんがいる。


職場への最大の裏切り。

ナース服への冒涜。


「きれいだ。」


そう言って彼はゴムをせずに入って来た。

避妊をしなかったのは、初めてだった。
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