定義はいらない

地獄

太朗ちゃんに抱かれ始めてから1ヶ月くらい経った頃から

私は不眠症に苛まれ始めた。


お酒好きの私は夜勤の日以外の週6日お酒を口にする。

ざるとまではいかないまでも

お酒を口にしたら「嗜む」では済まない。

酔っぱらうまで飲んでしまう。


ワインが1本空いて

酔っぱらって

孤独感を感じて

友達に電話をする。


本当は太朗ちゃんと話したい。

できたら今すぐ会いたい。

でもそれができなくて、そのはけ口を全て友達にした。


「もしもし?」

「今、何時だと思ってんの?」

「まだ0時前だよ。」

「私、明日早出だから。」


遥の冷たい声のトーンは私の不倫を責めている様だった。


「ごめん。」

「じゃあ切るよ。」

「えぇ~。」

「『えぇ~』って何?」

「寂しくてさ。」

「だからって私を彼氏の代わりにしないで。」

「代わりにしようがないよ。だってあんたは私を抱けないでしょ?」

「じゃあね。」

「ちょっと待って。」


友達をまるでサンドバックの様に扱っていた。
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