定義はいらない
「ねぇねぇ、鈴木さんさぁ。」

帰ろうとエレベーターを待っていると

黒縁メガネをかけた佐々山先生が急に話しかけてきた。

私はあまりこの医師が好きじゃない。

背が小さくせこせこしていて

口調がきつい。

患者さんにもきつい口調で話すところが特に好きじゃない。

でも医者としての腕はまぁまぁだから

私も愛想良くする。

太朗ちゃんと仲良い方だし。


「なんですか?佐々山先生。」

「俺、早川まどかさんのこと可愛いと思ってるんだよね。」


急に同期の名前が出てくる。

「あぁ…可愛いですね。」

「早川さん、彼氏とかいるの?」

「いないみたいですけど。私が知ってる限りは。」

「飲み会、セッティングしてくれない?」

「ははは。いいですよ。」

「俺の番号、教えておくからさ。」


そう言って佐々山先生は携帯番号を取り出した。
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