定義はいらない
その頃の私は太朗ちゃんと付き合いだして4ヶ月目に突入し、

私の不眠症も3ヶ月に入った。

私は毎晩泣いて

毎晩、罪悪感と闘っていた。

口では言う。

「私のことを裁けるのは太朗ちゃんの奥さんだけ。」


でも街を歩いているカップルたちや

ベビーカーに乗っている赤ちゃんや

手をつないでベンチに座っている老夫婦や

病棟の師長さん、上司、同僚、後輩が

みんな、私を責めた。


「お前は家庭を壊すのか。」

「お前は『泥棒』だ。『犯罪者』だ。」


胸が痛かった。

いつこの泥沼から私は這い出すことができるのだろう。

私は死んだらきっと地獄に落ちる。

でもその時は太朗ちゃんと落ちたい。

切なる願いだった。


でも心のどこかでは

この願いが叶わないことも

いつか私は捨てられることもはっきりと分かっていた。



そしてその日は思ったよりも

ずっと早くに私を突如として襲った。
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