シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
「エミリー、すまないが、この本はこの棚に入れてくれ。それとこれはこっちだ」
「はーい。パパ」
エミリーと呼ばれた少女は
腰まである柔らかなブロンドの巻き毛を揺らしながら
大量の本を抱えて、扉に向かう父親に向かって返事をした。
ここはイギリスのとある町にある、2階建てのしょうしゃな作りの家の書斎。
エミリーは学者である父の書斎の整理を朝から手伝っていた。
長年あつめた大量の資料や本は、棚がたくさんあるにもかかわらず、収まりきっていない。
常に、床や机の上に積み上げられていた。
父親は埋もれた本の中から、必要な資料や本を取りだすのに毎回苦労している。
ときにはイライラしているのを何度も見かけていた。
その様子に、エミリーは書斎の整理をすることを父親に提案してみた。
すると、面倒くさげな顔をしたが、エミリーが手伝うことを条件にようやく重い腰をあげたのだ。
部屋の中、見渡す限りの資料と本の山。
足の踏み場もないほどの状況に、エミリーは内心今日中に片付けられないだろうと思っていた。
本を重ねながら、ため息をついた。
「もう、パパったらこんなに溜め込むまで放っておくから、整理するだけでも一日かかりそうだわ・・・」