シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
心のうちを整理するようにゆっくりと静かな声を出した。
「―――では、引き留めることは、してはなるまいな・・・」
「ありがとうございます・・・」
エミリーはもう一度アランの頬に触れ、唇に触れた後、アランの首に腕をまわして自分の唇をそっと重ねた。
アランの瞳が大きく見開かれた。
初めて求められたことに驚いていた。
いつも自分の想いの方が強く、求められることなどないと思っていた。
初めてのエミリーからのキス。
これが最後のキス。
離れて行きそうな唇を留めるように後頭部をしっかり捕え、熱い想いを込めて何度も唇を重ねた。
心を絡め取る様に・・・思い留まって欲しいと願いながら、何度も―――
やがて、か細い腕がそっと逞しい胸を押して離れていった。
「わたし、この国に来てよかった・・・アラン様に・・・あなたに会えてよかった」
言葉と共に、エミリーの身体が光り輝いていく。
「エミリー?まさか・・・もう、行くのか―――?」
すぐさま腕を伸ばし、エミリーの身体を大切そうに包み込んだ。
「皆に挨拶もせぬのか―――エミリー、待て!」
―――わたし、忘れない―――この国のこと・・・この国で出逢った人たちのこと。
ありがとうメイ・・・
わたしのこと、たくさん心配してくれて。
この国に来て、初めて出来た、大切なわたしの友達。
さよならも言わないでごめんなさい・・・。
ありがとうパトリックさん。
こんなわたしを好きになってくれて・・・
いつも守ってくれて・・・
あなたの、あたたかくて優しい腕は忘れないわ。
エミリーの身体がアランの腕の中でだんだん光りに溶け込むように薄くなっていく。
アランは姿を目に焼き付けるように、腕の中の感触を忘れないように、ずっと無言のまま消えゆく身体を見つめていた。
「アラン様、さよなら・・・。わたしの愛しい人。忘れないわ・・・わたしの大切な人・・・わたしを守ってくれて、ありがとう―――」
エミリーは微笑みと悲しみを残し、光りの中に消えた。
薄暗い書籍室の中、腕の中を見つめたまま固まったアランの体。
銀の髪は小刻みに震え、暫くそのまま動こうとはしなかった。
「―――では、引き留めることは、してはなるまいな・・・」
「ありがとうございます・・・」
エミリーはもう一度アランの頬に触れ、唇に触れた後、アランの首に腕をまわして自分の唇をそっと重ねた。
アランの瞳が大きく見開かれた。
初めて求められたことに驚いていた。
いつも自分の想いの方が強く、求められることなどないと思っていた。
初めてのエミリーからのキス。
これが最後のキス。
離れて行きそうな唇を留めるように後頭部をしっかり捕え、熱い想いを込めて何度も唇を重ねた。
心を絡め取る様に・・・思い留まって欲しいと願いながら、何度も―――
やがて、か細い腕がそっと逞しい胸を押して離れていった。
「わたし、この国に来てよかった・・・アラン様に・・・あなたに会えてよかった」
言葉と共に、エミリーの身体が光り輝いていく。
「エミリー?まさか・・・もう、行くのか―――?」
すぐさま腕を伸ばし、エミリーの身体を大切そうに包み込んだ。
「皆に挨拶もせぬのか―――エミリー、待て!」
―――わたし、忘れない―――この国のこと・・・この国で出逢った人たちのこと。
ありがとうメイ・・・
わたしのこと、たくさん心配してくれて。
この国に来て、初めて出来た、大切なわたしの友達。
さよならも言わないでごめんなさい・・・。
ありがとうパトリックさん。
こんなわたしを好きになってくれて・・・
いつも守ってくれて・・・
あなたの、あたたかくて優しい腕は忘れないわ。
エミリーの身体がアランの腕の中でだんだん光りに溶け込むように薄くなっていく。
アランは姿を目に焼き付けるように、腕の中の感触を忘れないように、ずっと無言のまま消えゆく身体を見つめていた。
「アラン様、さよなら・・・。わたしの愛しい人。忘れないわ・・・わたしの大切な人・・・わたしを守ってくれて、ありがとう―――」
エミリーは微笑みと悲しみを残し、光りの中に消えた。
薄暗い書籍室の中、腕の中を見つめたまま固まったアランの体。
銀の髪は小刻みに震え、暫くそのまま動こうとはしなかった。