シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
祭壇の壁には二つの月と、天使の羽根と王冠がデザインされたマークがかけられている。

神官の前に二人が並ぶと、朗々と祝詞が読み上げられた。



「―――リンクとシェラザードの名に置いて、永遠の愛を、月に誓うか?」


「誓う」


「誓います」



「では、リングを外し、誓いのキスを―――」



武骨な指がリングをそっと外し、祭壇の上の小さな赤いクッションの上に置いた。

ベールを上げると、ブルーの瞳が愛しげに綺麗なアメジストの瞳を捕えた。



アランの脳裏に様々な想いがよぎる・・・想えば、これまでいろんなことがあった。

この先も多分、いろいろなことが起こるであろう。


だが、私は君を守り抜く―――


想いを込めてふっくらとした唇にそっと唇を重ねた。

その瞬間を待っていたかのように、貴賓館の鐘が打ち鳴らされ、それを合図に国中の鐘が打ち鳴らされた。

人々の祝いの言葉が飛び交い、幸せの笑顔が街中に溢れかえった。




いつまでも離れない二人の様子に神官は、困った表情を浮かべていた。

見かねたパトリックがアランの肩をポンと叩いた。


「―――っと、アラン?すまないが、誓いのキスはもうおしまいだ」


「分かっておる」


不機嫌そうに眉を寄せ、不満げに唇を離した。

エミリーの頬は薔薇色に染まり、少しふらついている。

神官が遠慮がちに咳払いをした。



「あー、もう宜しいです。結婚の儀は完了いたしました」


「では、皆に挨拶しなければな―――」




エミリーを抱き上げ、アランは貴賓館の外に出た。

そこには城中の人が二人を祝いに集まり、笑顔で溢れていた。


エミリーは持っていたブーケをメイドたちの輪の中に向かって投げた。

メイドたちは手を伸ばして受け取ろうとするが、ある者の手の中に丁度すっぽりと、まるで最初から決まってるかのように、綺麗にそれは収まった。

その手の主は、メイ。

笑顔のメイドたちがメイを囲み、兵士たちがジェフの傍に駆け寄り、メイの元に連れて行った。

ジェフが照れながら何かを言うと、メイが恥じらいながらも首を縦に振っていた。

周りの人々の拍手とお祝いの言葉がわっと広がっていった。

エミリーはアランの腕の中で、その光景を嬉しそうに微笑んで眺めていた。



――皆が幸せになれますように

そう、願いながら―――
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