シャクジの森で 〜月夜の誓い〜【完】
じーんと感激に浸っていると、メイの窘めるような声が耳に届く。



「きっと、エミリー様の耳に入れば、おかしなことを考えると思ったのでしょう。自覚、ありますか?」


「―――自覚は・・・」


ないわ・・・と、聞こえないような小声で返す。

だって、そのときに考えることは、わたしとしては至極まっとうなことだもの。

毎回おかしなことを考えてるつもりはないわ。

ルーナさんのお屋敷のことのような例外もあるにはあるけれど―――




「気をつけて下さいね?私たちは気が気じゃないんですから。はい、エミリー様、気を取り直して。お口を開けて下さい」


どうぞ、これ、新発売されたものなんですよ、とスミレの砂糖づけが中に放り込まれる。





「・・・で、エミリー様?宿題の答えは分かりましたか?」

「ぁ・・・あの、アラン様に聞いてみたの。何か変わったことありますか?って・・・そうしたら」


「え!?直接ご本人に聞いたんですか?もぉエミリー様ったら・・・・よく観察して下さいって、言ったじゃないですかぁ」



でも、よく聞けましたね・・・と、感心しながらもかっくりと頭を落として残念がるメイ。

確かにそうだけど、いくら見てても普段と一緒で、違いなんてまったく分からないんだもの。



「仕方ないですねぇ、もぉっ。―――で、アラン様は何と仰ってましたか?」

「えぇ、そうしたらね、こう言ってくれたの『君がおるゆえ、朝食をしっかりと食べるようになった』って」


「えぇ、それで――――?」



メイの表情がぱぁっと明るくなっていく。

ワクワクしてる様子が伝わってくる。

これは、もしかして・・・当たってるのかも―――?



「――――だから、健康的になったのでしょう?」



王子様だもの、侍女長さんも日頃から気にかけて下さっていたのよね?


そう言うと、嬉しそうだったメイの顔がみるみるうちにしぼんでいく。

首を振りながら額をおさえて俯いてしまった。


「あの、メイ、大丈夫?」

「はぁもう・・残念すぎます。今一歩です・・・外れです。確かに、それもとても大切なことで城の皆が喜ぶことではありますけど。違います」

「ぁ・・・でも・・・メイ??」


今一歩ということは、答えは近いのでしょう?


「エミリー様、いいですか。こればかりは、当てられるまで絶対に答えは教えませんからっ。次回までの宿題です。いいですね!?」



ビシッとキッパリ宣言され、そのあと何度訊ねても頑なに教えてもらえなかった。


答えは持ち越し・・・。


アラン様の立派なお姿が思い浮かぶ。





アラン様、あなたは何が変わったの―――?





fin
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