美味しいプライド
かなえは都内のお嬢様女子大のミスキャンパスになってから、女性誌やアイドル雑誌に何度か顔を出したりしていて、念願の民放のアナウンサー試験も割りといいところまでいったけど落ちてしまい、現在はフリーアナウンサー向けの事務所に所属してレポーターなんかをやっている。
対する由美は単なるバイトのイベントコンパニオンだけど、長身と派手な外見を活かして「東京モーターショー」なんかにも何度か顔を出しているうちに、いつのまにかヲタク系のファンがついて、ネット上には由美のファンページなんかもできている
命取り・・・。
由美はかなえの、よく言えば感受性が強い、悪く言えば自意識過剰で精神低に不安定な性格を思って焦りを感じ、急いで携帯の電話帳を探った。
数多い名前の中からやっとかなの電話番号を探り当て、焦れて力の入った親指でプッシュしたら、伸ばしかけた爪がボタンの隙間に不器用に引っかかって、イライラした
「ただいま、電波の届かないところに・・・」
留守電のアナウンス。
電波はかなえの家にはかすりもしない。
チッ。
由美はまた舌打ちをした。
あいつんち、田舎すぎっ!
2人の実家がある千葉の田舎町は東京から1時間のベットタウンで、特にかなえの住む地区は夏は蛍が出るほどの田園地帯だ。
12時15分・・・15分前に書き込んでる・・・じゃあまだオンラインかもしれないな
まさかこんな時間に実家のイエデンに電話するわけにいかないしなぁ。
由美がキーボードにかけた長い爪は、一瞬ためらった後、酒の勢いに押されるように、忠告の言葉を弾きだした
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