美味しいプライド

「kanaの発言:ねぇ由美。あたしね、最近気がついたんだけど、あたし、本当は、マゾかもしんない。」
ねぇかなえ、あたしも最近気がついたんだけど、あんた、本当に、馬鹿かもしんない。
いつもはちょっとやそっとの下ネタぐらい鼻で笑い飛ばしている由美なのに、得体の知れない恥ずかしさで赤面してしまった。
そんな独白はチラシの裏にでもかいとけよ!
と突き放したい気を抑えつつ、かなえと陽平の恋に対する好奇心に負けて、もうどうでもいいやって気持ちで返信してしまった。
「yumiの発言:何?あんたどうしたの、なんでそう思うわけ?」
チャットかよ、って言うくらい、瞬時に返事が帰ってきた
「kanaの発言:陽君なんて最低なのに、最低な分だけドキドキするの。良ちゃんとか優しいんだけどちっともドキドキしない。あたし、自分を傷つける可能性の無い男にはグッとこないんだよね。感じない、何も。」
グッとくるねぇ・・・
ロリ系いいこちゃんが、たいしたもんだ。
「yumiの発言:なにあんた?陽平となんかあったわけ?」
「kanaの発言:あー、ふられた。帰ったよ、嫁んとこ。」
正式には嫁じゃないんだけどな・・・。でもこれはちょっと意外だった。
「yumiの発言:で、遊ばれて捨てられた?あたしの純潔返して。とかそういう系で荒れてんの?」
欲情とか書いているあたり、よっぽどのことがあったのかと思いきや、かなえからは
「kanaの発言:それはない。ギリギリセーフ」
という返事がかえってきた。
「yumiの発言:なによギリギリって?やってはいないけど心が傷ついた、ってこと。馬鹿でしょ?」
あまりのアホらしさに、ついついキツい口調になってしまう。
由美の書き込みの後、しばらく沈黙が続いて、由美は焦れて何度も更新ボタンを押した。
怒って寝たのか?と思えなくもなかったけど、由美には今かなえが、憑かれたようにカチャカチャと長文を打ち込んでいる姿が目に見えるようだった。
10回目のリロードの後だろうか?画面には、取り乱した若い女の顔を浮かび上がってくるような、ちょっとゾッとする感じの濃い長文が表示された
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