美味しいプライド

「kanaの発言:ばかばかしいよ、まじで。ねぇなんでな訳?あたしは、23歳の若い娘で、現役アイドルで、ルックスだっていいし育ちだって頭だって悪くないよ。
自分から男にお金なんて1銭も使わせないしピカピカの清純派で、自分で言うのもなんだけど、男の妄想そのままみたいな女じゃない?
それなのになんで?あんなにあたしを眩しそうに見ていた30歳の冴えないおやじが、どうしてあたしをお試し期間のおもちゃみたいに中途半端にチヤホヤして、そんで捨てるわけ?であんな元キャバ嬢の色黒女に負けるの?旦那のカード使い込むよーな他の男の子供連れたおばさんにだよ。勝てない理由がどこにあんの?」
10年来の親友の由美でさえ見たこともないような痛い感情丸出しのかなの文章は、もはや由美に引く隙間も与えないくらいやらしい情念が凝縮されていて、由美は諦めに近い清々しささえ感じた。
ビールが徐々に沁みてきて、だんだん脳みそが緩くなってくる。
由美は盗聴されるどころか100万人の誰にみられてもおかしくないブログ上で語っていることさえ、なんだか面白く思えてきた。
どんだけ露悪趣味なんだよ、あたしたち。
由美は、美女二人がビール片手にあられもない姿でキーボードを叩いている姿さえ、リアルタイムでネット上で配信されているような変な気分になって、得意のピアノを弾くように優雅にキーボードを叩き始めた
「yumiの発言:まぁおおかた間違ってはいないと思うよあんたの自己認識は。勝てねー理由はあたしにもよくわかんないわね。陽平だって最初は超めんどくさいことしてまで女と別れてあんたをとったんでしょ?理由なんて、かなえにしかわかんないよ。心当たりは、無いわけ?」
もう長い沈黙さえ気にならない。さっきよりもハッキリと、キーを叩くかなえの姿が想像できる。
< 9 / 23 >

この作品をシェア

pagetop