シスコン王子とブラコン姫
「ふふっ、呆れた?」
リストカット─...何でこんな事?
「いつから...うららはそんなに
弱くなっちゃったんだよ...?」
「...悟ちゃんと離れてから。
ずっと1人だったから。知らない国で
知らない人と生きていた。知らない環境で
ずっと1人で─...大きな箱の中に
1人で入れられていた。寂しかった。
でも悟ちゃんとの約束があったから...
私、ここまで生きてきたんだ。」
「うら...ら。」
「私、1人は慣れてる。けど...私は...
誰かに愛してほしい。」
愛してほしい...?
「愛されたい。愛を感じた事がない。
だって...ずっと1人だったから。」
俺はうららを力一杯抱きしめた。
ごめん沙菜。
いまうららを1人にしたら失って
しまうような気がして怖かった。
同情だったのかもしれない。
けど...うららは家族のような
存在で失いたくない。
いい思い出にしたかった。
思い出を消したく...なかったんだ。
「ウッ...悟ちゃ...「もう喋るな。」
うららを抱きしめたらうららの
寂しさが伝わってきたような気がした。
ずっと辛かったって俺に
訴えているようにうららは
俺に抱きついている。
俺も溢れてきそうな涙を堪えて
うららを抱きしめて
うららの気持ちを全部受け止めた。
どうかうららにも幸せに
なってほしかったから.....
でも俺は鈍感でばかであほで...
人の気持ちなんてこれっぽっちも
分かっていなかった。
こうして人の痛みをわかっているようで
1番わかっていなくて...傷つけていた。
大事な人を─...
俺は沙菜の視線になんて気づかなかったから。