シスコン王子とブラコン姫
途中車の中で私は
手汗が凄かった。
「...お嬢様のことを...恨まないで
ください.....。」
執事さんは少しさっきより
低い声でバックミラーで私を見ながら
そういった。
「...恨みませんよ。うららちゃんの
事は...好きですから。」
執事さんの表情が少し
やわらかくなった。
「沙菜さまは本当にいい人ですね。
お嬢様も...ほんとに楽しかった
ようでございますよ。」
「...あの...どうして私の名前
知っているんですか?」
執事さんはにこっと笑った。
「あの...聞こえませんでした?」
「はははっ。聞こえましたよ。
お嬢様を悟様のおじいさまがたの
家まで連れてくる時沙菜さまの
話はしつこくきかされてましたからね。」
「えっ!?」
うららちゃんが...私の話?
「お嬢様は...あれだけお金の山に
囲まれて育ってきたのに...ほんとに
ほしかったものは手に入らないで
生きてきていました。私はそんなお嬢様を
見ているのが辛かったです。」
執事さんの目が少し赤かった。
「歳をとると涙もろくなって
しまいましてね...」
執事さんはポケットの中に手を入れて
ハンカチを探している。
「あ...ハンカチ忘れてしまいましたね。」
執事さんは上を少し向きながら
笑っている。
私はバッグの中から自分のティッシュを
1枚とって執事さんに渡した。
「これは、これは。すいませんね。
お嬢様方にはどうか秘密にしてください。
執事失格になってしまいますからねー。」