シスコン王子とブラコン姫
すると沙菜の手がぴたっと
止まった。
「沙菜...?」
また沙菜の顔を覗き込むと沙菜の目から
一粒の涙がゆっくり溢れた。
沙菜は固まっている。
「...沙、菜?」
「信じてた...ずっと...助かるって...。
けど...私は...ダメだったの。」
「...?」
沙菜の言っている意味がさっぱり
分からない。
「最後に交わした一言も...
ほんとは“いってらっしゃい”って
言っちゃった...。だから...もしかしたら
お母さんは...天国に行っちゃったのかも
しれないよ.....。」
沙菜の言っている意味がやっと分かった。
自分の亡くなった母親の
話をしているんだ。
「病院で...うららちゃんと...同じように
ずっと...ずっと信じて...願った。
でもだめだった。すぐ死んじゃったよ。
その日から...お母さんは私の夢には
二度と出てこないの......。
出てきても...死んでいる。
死んでいるお母さんの夢では...
いつも私がお母さんの
お仏壇の前で座って泣くの。
それは...病院でこうして座っている。
夢でも会えないんだよ─.....。」
沙菜はずっとそんなことを抱えて
生きてきていた─...。
なのに俺はうららを救おうとした。
沙菜なら大丈夫だしなんでも
分かってくれるって思ってた。
でも─...みんな同じだけツライ思いを
しているんだ─...。
「なんで...みんな“また明日ね”って
言うんだろう...?」
「え...?」
「明日があるか...分からない。
みんなそうでしょ?」
「当たり前に...なってしまったんだ。」
「え...?」
気づいたら俺もクサイ事を
言っていた。