シスコン王子とブラコン姫
「俺も明日があるのは当たり前だって
思っている。けどそんなの
分かんねえよな。今だってこうしている
間に苦しんで...命をおとしていく
人が沢山いる。
でもな...沙菜。」
俺は沙菜の手をもっと強く握った。
「何?」
「“いってらっしゃい”は、
悪くねえよ。」
「...え?」
「いってらっしゃいって言われて
きっと...絶対沙菜の母さんは
この家に帰ってくるって...
最初から決めてた。そう思って
いたんだから─......。」
「ウウッ.....。」
「だから沙菜は“おかえり”って
言いたいかもしれない...。
けど─...またいつか絶対みんな
会えるんだから─...
きっと会える。だから...
「ありがと。」
沙菜は片手で目をゴシゴシ
拭いて笑って見せた。
あ─...。
初めて見た。この笑顔を。
今まで俺に見せなかったこの笑顔。
中学のアルバムで...
沙菜が笑っていたこの笑顔...。
やっと見れた。
やっと笑わせれた。
やっと沙菜も...幸せな道に
進む事が出来る─.....。
俺は何度転んでもその小さな
背中を支えて...
おして行きたい。
どこまでも─...どこまでも
ずっと一緒にいたい─。
─────
「悟!沙菜っ!」
裕也の声が聞こえて見ると
姉ちゃんと裕也が息をきらして
俺達の元まで走ってきた。
「うららちゃんは!?」
姉ちゃんはもう泣きながら
聞いてきた。