シスコン王子とブラコン姫

俺はそんなうららに
手を差し伸べる事はできなかった。

うららが見えないように
そっと自分の唇をふいて
うららの肩を軽く叩いた。

「...行くぞ。」

うららは、急に立ち上がって俺に
抱きついてきた。
俺は抱きしめられなかった。
ただうららが泣き止むまで
うららに抱きしめられていた。

「悟ちゃんーっ.....。」

うららはずっと俺の名前を
呼びながら泣きじゃくっている。

俺は、うららの背中を
優しく撫でた。

まるで小さい頃のように─。

小さい頃は無邪気で...
何にも知らなかった。
他人を愛するだとか...
そんなのは全然知らない。
運命なんてわからない。

でも...いつかは誰かと結ばれる
それだけは知っていた。




あの小さい頃─...

「悟ちゃんっ♪おままごとしよ♪」

「うんっ。いいよ。じゃあ、悟が
お父さん役ね。」

「じゃあ、うららはお母さん役♪
綾乃ちゃんはお姉ちゃんね♪」

「うんっ♪おままごととってくるー。」

姉ちゃんが小さな背中で
おままごとをとってきている
最中のことだった...。

「ねえ、悟ちゃんっ♪うららたちは
結婚してるってことだから指輪
しようよーっ。」

うららはおもちゃの指輪を2つ
持っていた。

「うんっ。「待って。指輪うららが
悟ちゃんにはめてあげる♪」

「えー?」

うららは強引に俺の手をとって
少しブカブカな指輪をはめた。

「はいっ。じゃあうららにも指輪
つけてっ♪」

「うん...?」

「違う違う、親指じゃないっ。
ここだよっ。」
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