シスコン王子とブラコン姫
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「あたしが...あたしが悟ちゃんの
苦しみ半分にしてあげる。
だから...お願い。あたしを見て。
あたしを....1人にしないで。」
電車の中でなんどもうららがいった言葉が
頭のなかでこだまする。
違う。沙菜は、遠くになんて
行ったりしない─。
そばに...いてくれるはず...か?
こんな俺のそばにいてくれるのか?
そんなわけ...ねえかもな。
だって俺は沙菜に最低なことを言ったから。
ならせめて...
沙菜の口から別れを告げられたほうが
どれだけよかったんだろう─。
こんなのみじめだろ。
沙菜はそんなに俺の声も顔も
見たくねえのかよ.....?
震える手でこっそり沙菜に電話を
する─。
コールの音が響くたび胸がドクドクする。
こんなに怖くなったのははじめてだ。
─〈ただいま電話にでることができません。
ピーッとなりましたら御名前と〉─ブチッ
「...なんで...でてくんねえんだょ。」
1人でそうつぶやいて
携帯を握り締めた。
沙菜を...俺は裏切ったのか?
沙菜が...俺を裏切ったのか?
違う。
俺が裏切ったんだ─。
沙菜は...何も悪くないのかも
.....しれない。
本当の理由をしらない俺達は
何度もすれ違いばかり繰り返していた。
揺れる電車の中で...
初めて愛しくてたまらない
涙をながした─。