シスコン王子とブラコン姫

─────

「沙ー菜っ♪宿題見ーしてっ♪」

綾乃が3時間目の前にノートを両手に抱えて
精一杯の笑顔で私の机の前に立つ。

「...いいけど綾乃が見せてっていうなんて
珍しいね?」

鞄に手をかけたときだった。

「おう!悟ちーっす。遅刻じゃんかよ。」

「うっせえな。目覚ましかけんの
忘れたんだばかやろー。」

クラスメイトに手をいれている
悟。

クラスみんなが悟を見て私を見る。

「っッ.....。」

今にも逃げ出したい気持ちでいっぱい。

だけど...そんなの負けたような気がする。
だから...無理だよ。

「沙菜...「ごめん。私次の授業サボるね。」

綾乃に強引にノートを渡しつけ
悟が立っているドアの逆から私は
出ていった。

「沙っ...。」

悟が小声で私に話しかけたような
声が聞こえたような気がしたような...
しなかったような...。

「川崎っ!」

3時間目の教科担任とすれ違って見つかったのに
私は、先生を無視して廊下を
走る。

走って走って─...
このまま誰もいない世界に
消え去りたい─。

お母さんに...会いたいよ。

< 237 / 283 >

この作品をシェア

pagetop