シスコン王子とブラコン姫
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「沙ー菜っ♪宿題見ーしてっ♪」
綾乃が3時間目の前にノートを両手に抱えて
精一杯の笑顔で私の机の前に立つ。
「...いいけど綾乃が見せてっていうなんて
珍しいね?」
鞄に手をかけたときだった。
「おう!悟ちーっす。遅刻じゃんかよ。」
「うっせえな。目覚ましかけんの
忘れたんだばかやろー。」
クラスメイトに手をいれている
悟。
クラスみんなが悟を見て私を見る。
「っッ.....。」
今にも逃げ出したい気持ちでいっぱい。
だけど...そんなの負けたような気がする。
だから...無理だよ。
「沙菜...「ごめん。私次の授業サボるね。」
綾乃に強引にノートを渡しつけ
悟が立っているドアの逆から私は
出ていった。
「沙っ...。」
悟が小声で私に話しかけたような
声が聞こえたような気がしたような...
しなかったような...。
「川崎っ!」
3時間目の教科担任とすれ違って見つかったのに
私は、先生を無視して廊下を
走る。
走って走って─...
このまま誰もいない世界に
消え去りたい─。
お母さんに...会いたいよ。