シスコン王子とブラコン姫
「...帰るから待ってよ。」
沙菜は照れくさそうに立ち上がった。
周りからの視線が俺と沙菜の
距離に集まる。
並んで歩かない俺たち。
俺はゆっくり歩いているつもりだが
沙菜はもっとゆっくり歩いている。
「...なんで隣歩かねえの?」
俺は立ち止まって後ろを振り向いた。
「...悟こそ。」
沙菜は口を尖らせた。
「...別に。」
「ならいいじゃん。」
「...ん。」
俺は歩くスピードを変えないでまた
歩き出した。
沙菜もさっきとスピードのまま
歩き続ける。
周りはコソコソ俺たちを見て
話しているがそんなの気にしねえ。
俺と沙菜は誰も見えない学校から
少し離れた公園まで20分くらい
歩き続けた。
─「...はい。」
俺は近くの自動販売機で
オレンジジュースを1つ。
コーラを1つ買ってきた。
「...ありがと。」
沙菜はオレンジジュースを両手で
持って寒いのか手に息を
かけている。
「.....沙菜は、今の俺のこと
どう思っている?」
「えっ?どうって別に.....。」
こういうときにどんな会話を
すればいいのか分からない。
「今、沙菜は幸せ?」
「...幸せなわけないじゃん。」
沙菜はつぶやくように言った。
「幸せじゃないよっ!
こんなの幸せじゃない!」