シスコン王子とブラコン姫
「沙菜ちゃん.....。」
うららの隣にはなぜか執事さんがいた。
「...うららちゃん─.....っ。」
沙菜は黙ってうららの手を強く握った。
「...何で?何で沙菜ちゃんの手はそんなに
つめたいの?」
「え.....?」
うららの大きな瞳から涙がこぼれる。
「...言ってた。パパが。つめたい手の人って
優しいって。あたし...暖かいでしょ?
あたしは...冷たい人なのかな?」
「...違うよ。手が暖かい人はいつも
どんなときでもずっと暖かいんだよ?」
「...うん。」
うららは重そうに頬をあげた。
けどあがりきっていなくてどこか無理を
しているようにも見えた。
「...そろそろ始まりますよ。」
執事さんがうららの顔を覗き込む。
「...はい。」
うららはヨタヨタと歩いてすぐに姿を
消した。
「おいかけなくていいんですか?」
俺は執事さんに聞いた。
「悟様と沙菜様だけでじっくり話を
したかったので...。」
「話?」
俺と沙菜で顔を見合わせる。
「はい。私は...明日にて執事を
退職させてもらうことになりました。」
「「っっ!?」」
驚いて言葉も出なかった。
「こんなことになってしまったのも私が
旦那様のお体に気遣いが
足りなかったためでございます。
悟様にも沙菜様にも迷惑をかけて
しまったことを深くお詫びいたします。」
「でも執事さんがやめることは
ないじゃないですか!」
沙菜は身をのりだして言った。