記憶〜切愛〜
「しっかし、鈴音がこの学校に来るとは運命だったのかな?」

私の頭よりも高い位置にあるその顔は大木を見上げた。

「どーゆーこと?」

「ここは俺の母校なんだよ。」

そんなの知らなかった。

お兄ちゃんはあまり自分のことを私に教えてくれなかったから。

私がこの学校に行きたいって言ったとき、やけにここのことに詳しいとは思っていた。

応援もしてくれて、力になってくれた理由はそーゆーことだからなのかな?

私はお兄ちゃんの顔を見上げた。

あの寂しい目が桜を見つめていた。

「んで、ここは“俺たち”のお気に入りの場所だった。」

お兄ちゃんが私の髪をキュッとつかんだ。

「そうだ、鈴音後ろむいて?」

お兄ちゃんはいつもの笑顔に戻ると、私の肩をつかみ回転させた。

「なにするの?」

「いいから」

お兄ちゃんが私の髪をサラサラと撫でる。


気持ちいい。


私は目を閉じた。

ずっと昔にこんなことをしたような気がする。

ここによく似た場所で。

でもそんなことはありえない。

こんな場所は他に心当たりはないから。

「はい。できたっ」

後ろ髪をキュッとひかれ、鈴の音が聞こえた。

手を後ろに回すと、束ねられた髪にお兄ちゃんのあのゴムがついていた。

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