記憶〜切愛〜
入学式の日。

私は他の人よりも早く学校に呼び出された。

なんでも入学生から一人、学校側へ挨拶のようなものをしなくてはいけないそうで。

私がそれに選ばれたらしい。

「あら、白石さん。時間どおりに到着ね」

試験監督だったのメガネの女教師の人だ。

「いえ、知り合いの人が車で送ってくれて」

私は一歩後ろへ下がってしまう。

なんとなく、この人が怖かった。

「そう。よかったわね」

厳しそうに見えていた彼女の顔がほころび、優しい表情になる。

少しホッとした私はまた一歩前へ出た。

「この原稿を読んでもらいたいのよ」

彼女は一枚の作文用紙を私に渡した。

そこには軽く台詞らしきものがかかれていた。

「あなたにはこの文章を読んでもらいたいの。原稿は見てもいいわ」

あまり長くはない文だが、土壇場で覚えられるものでもない。

おまけに私はかなりのあがり性で台詞を忘れる可能性が高い。

「持って読むことにします…」

「あまり緊張しないで?すぐにおわるわよ」

顔に似合わず、優しげな彼女の雰囲気に少しだけ落ち着いた。

やるしかないか…










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