記憶〜切愛〜
教室に入ると一際目立つ茶色い髪の子が私に飛び付いてきた。

「鈴音!二人とも受かってよかたです!」

アンジュが私の首に手を回し、ぎゅうっと抱きついた。

彼女のふわふわの髪からいい匂いがする。

私よりも背の低いアンジュは少し背伸びをしてる。

本当に可愛らしい子だな…

「そうだね、アンジュと同じ学校で嬉しいよ」

アンジュの頭を撫でると、彼女は尻尾を振り回す子犬のように目を輝かせた。

「アン、日本で友達初めてできた。鈴音が一番だよ」

少しぎこちない日本語で一生懸命喜びを訴えてくる。

「そうだね、そろそろ席につかないと先生が来るよ」

私たちは自分の席につく。

アンジュの席はちょうど私の隣だった。

目を輝かせ、ずっと私を横から見てくる彼女の視線がまぶしい。

私は彼女に一度笑うと前を見つめた。

先生が教室に入ってきた。

あのメガネの女教師だ。

彼女は微笑み自己紹介をはじめた。

「このクラスの担任の早川莉子です。三年間よろしくお願いします」

軽くお辞儀をされて、みんなも少し会釈をしていた。

「さっそくですが、委員会を決めます。

学級委員はもう決まっています。名前を呼ぶので前に出てきてください。

白石さん」

< 20 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop