記憶〜切愛〜
お兄ちゃんが意地悪っぽく笑った。

よく見るとその女の子は顔も髪型も服も私そっくりだった。

「ちょ!?根に持つなんてサイテー!!」

スケッチブックを取り上げて、その絵を破りとった。

「おまえなー…。あんだけ外で待たされて何とも思わないほうがおかしいだろ?
おまえのことだから信号確認しないで車にひかれたのかと心配してたんだぞ?」

呆れた目で見下すお兄ちゃんに少しイラッとくる。

「私はそんなバカじゃないですよーだ!」

気が付くと悪態を吐いていた。

心の奥の方では心配してもらったのがうれしかったのに…

「はいはい。
ほんっと可愛くねーなー」

「んなっ!?」

私の頭を乱暴に掻き回すと、お兄ちゃんはスケッチブックをひったくって新しいページにシャーペンで薄く文字を書き、私によこした。


『俺』


紙に書かれた薄い文字。

「とりあえず今日のテーマだ。
今から俺を書け。今の俺でもいいし、記憶のなかの俺でもいい」

「そんなっ!?いきなり…」

「は・や・く。」

お兄ちゃんは有無を言わさず、私の方に画材道具をポイポイと投げ渡してきた。

私は仕方なく、えんぴつと消しゴムを手に取りスケッチをはじめた。




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