記憶〜切愛〜
「イメージできたら目を開いて“それ”を書く大きさをまるで囲って」
「そこに思ったままを書くんだ」
━━ あの時私が書いたものは猫だった。
でも今頭に浮かんだのは…
スケッチブックに薄い円を書く。
それが徐々に人に近づく。
右手で頬杖をつく青年。
手首には鈴のゴム。
寂しそうな悲しそうな、儚い視線を窓の外に向けて…
ただただ寂しさを隠そうと誤魔化すように微笑む口元。
それは“彼女”のことを話すときのお兄ちゃんだった。
「30分たったな…
どれ、見せてみろ。」
伸びてきた手に驚いてスケッチブックを後ろに隠した。
「やっぱ無理!お兄ちゃんて落ち着きがないからイメージしずらい!」
「なんだとー?コイツッ!」
あっという間に羽交い締めにされて頭を拳でぐりぐりと押された。
「痛い痛いっ」
「ごめんなさいは?」
「ぜぇーったい言いません!」
ケタケタと笑う私。
お兄ちゃんとこうしているのが大好きだった。
だってお兄ちゃんは私の憧れの人だから…