記憶〜切愛〜
「えと…私鈴音っていうのあなたは?」

受験を行う教室へ向かいながら私は彼女に話し掛けた。

「あ、えと…私アンジュといいます。みんなにはアンと呼ばれています」

「アンジュ?あなたハーフ?」

「はい」

ニコニコと返事をするアンジュ。

「ヨーロッパから帰ったばかりで日本語が読めないんです」

「ヨーロッパ!?じ、じゃあ帰国子女?」

「ウィー」

「へ?」

「あ、すみません『はい』という意味です
日本語は昔父に教わったので話せるので安心してください」

最初からすっごい子と知り合っちゃったな…

焦りと緊張を胸にアンジュと教室へと歩みをすすめた。





受験会場には三十人ほどしかいなかった。

美術科は少人数製で一クラスしかない。

それでも受け入れられるのは三十人。

今年試験を受けるのは六十人。

試験会場は二クラス使っているらしい。

つまり、半分ぐらいしか受かることができない。

いきなりプレッシャーと恐怖が襲い掛かってきた。

私がびくびくしているとアンジュが私の肘をつかんだ。

アンジュも恐がってるのに気が付いて、少しだけ安心した。

私はアンジュに一度笑顔を向けて一緒にお互いの席を探した。
< 9 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop