悲恋マーメイド
細い気道の隙間からそれでも懇願する女に本気で殺意が浮かぶ。


「聞いて。お願い」

「出ていけ」

「お願い」


女は
涙を浮かべながら、

笑った。








「最後だから」









―――最後。


不可思議なその単語に、男は手を離す。

警戒するように間合いを広げると、二三度せき込んだ女が整えるように息を吐いた。

その姿はひどく淋しいものだったが、男の瞳は厳しいままだった。
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