悲恋マーメイド
百年という月日に
賭けた。


百年ずっと
呼びかけよう。

百年毎日
笑いかけよう。

そうして一縷の望みをかけた。

男が少しでも優しさを自分に築き、瓶を割り歩き出してくれる可能性を。

しかし
百年目の今日、

男は変わらず
凍ったままだった。


女は決めていた。


百年ずっと
男に呼びかけよう。

百年毎日
男に笑いかけよう。

それでも男が闇から抜け出さないのであればその時は、

自分のすべてを
賭けて


男に『愛』を
返そうと。

女は懐から小さな小瓶を取り出した。

中には澄んだ紫色の液体が揺れている。

男は女の手のものを訝しげに見つめ、不信そうに口を開いた。


「西の魔法使いの薬か」


女は黙って微笑むことで肯定した。
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