初恋は夢の中
「 せんせい… 」



お湯を沸かしていた、先生が振り向く。

先生は、私を見るなり
『美加子…』と呟いた。


「先生…。」
私は、更に大きく言う。


先生は、ハッとしてから、
「今、お茶を入れるから。」
と、私から目を逸らした。


亡くなった奥さんの名前…
『 ミカコ… 』か…


胸が、ジーンとした。


「お茶が入ったぞ、さぁ、座って。」

素直にソファに座り、カップを取ると ココアのイイ香りがした。

お茶って言うから、コーヒーか日本茶を想像してたけど、ココアは意外だった。


私は、嬉しかった…


一口飲んだ。
「美味しい…。」


先生は、嬉しそうに
「そうか…。」
と、照れて頭を掻いた。


「うん…。すごく美味しい。」
私は泣きながら、ココアを飲み干した。



「コーヒーとも思ったんだが、寝れなかったら困るしな、緑茶だったら ジジ臭いって言われ…た……???」



私は無意識に、先生に抱き付いていた。



「会いたかったのぉ…」
泣きながら、必死に言葉にした。


何度も、何度も、…
言葉にし、声を出して泣いた…



先生は静かに、私を強く抱きしめてくれた…


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