初恋は夢の中
桃子が先生の家に来てから、1ヶ月が経った。


何時もの様に、先生を見送ってから私達も短大に向かう。

それは何となく、日課になっていた…。



「ねぇ…、美和子?ずっと気になっていたんだけどぉ…」
短大に登校する途中に、口籠もりながら、桃子が聞いてきた。

「なに?」

「いや…。たいした事じゃないんだけど…」
「どおしたの?」

「美和子は、先生のコト"先生"って呼んでるでしょ?なんで名前で、呼ばないんだろう、ってちょっと不思議だったから…」


私は思わず、
あー…と、空を仰いだ。

「どうしてかな…。 高校から"先生"って呼んでたから、ついつい癖で呼んじゃうのかも…」

「ゴメンネ…。ヘンなこと聞いて…」
桃子は謝った。


「私…。やっぱりヘンなのかな…? 付き合ってたら、名前で呼ばれたいのかな…?」


桃子は少し考えてから、
「私は最初から誠一さん、って名前で呼んでたし、今まで付き合った人も名前で呼び合ってたから…。でもだからって、美和子がヘンって言ってる訳じゃないのよ…」

「うん!分かってるって!」
とは、言ってはみたものの…
内心は穏やかじゃなかった…


私は、先生とそんな話をしたコトないし…

先生は、先生だし…

急に名前で呼んだら、先生…

きっと、ビックリするよなぁ…




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