ヤンキー彼氏と地味子の恋。
遠くの方から吹奏楽部の演奏の音や、運動部の声が聴こえる。
少しだけ乾いた永瀬くんの唇。
その感触は、今でも忘れられない。
唇を離して、永瀬くんがニヤッと笑う。
『…莉子の心臓止まっちゃいそうだから、フレンチにしとくわ(笑)』
あたしには、その意味がわからなかったけど…
とりあえずドキドキするこの瞬間が終わってホッとしたのを覚えてる。
でも……最近のあたしはなんか変なのだ。
また…あの感覚を感じたいと思っていたり、
永瀬くんの唇を異様に凝視していたりするのだ。
彼に触れて、またあのドキドキを感じたい。
本当に……この感情が何なのか…よく、わからない。
「……お邪魔します。」
放課後、約束通り永瀬くんと下校し、彼の家へとやってきた。
「どうぞ。ってか、そんなかしこまらなくていいよ(笑)誰もいねぇし、自分の家だと思ってくつろげ。」
そうは言っても、人様の御宅。
粗相があってはいけない。
あたしは極力、床を傷めてしまわないようにソロリソロリと歩き、彼が招きいれてくれた部屋へと入る。
永瀬くんの部屋。
部屋は、白と黒を基調としたインテリア。
彼が大好きなものなのか、バイクや車の模型が並べられていた。
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