シンデレラ★バレンタイン
「まったく…彼女がいるなら今日という日を分かっててほしかったわ。
それに今ここで訊いちゃだめでしょ、そういうことは。」

「え?」

「ま、作るものは作り終えたし、私は帰ろうかしらね。
あとは二人でゆっくり過ごしたら?
たまには〝恋人〟っぽく、ね?」


艶っぽく里穂が口角を上げて笑う時は、大抵からかってる時だ。
そんな里穂はあたしの肩に手を置いて、小さく


「…悪いのは私じゃなくて瞬よ?
でも、せっかく二人きりの時間をゆっくり取れるんだから、頑張って。」


とだけ囁いて、キッチンの方に戻ってしまった。
…取り残された、気まずい空気の中に瞬と二人きりで立ち尽くす。





「…数学、教えてやるよ。」

「え?」

「自力で5枚、無理だろ。真姫は。」

「…い、いいの?」

「当たり前。おじゃましまーす。」


気まずい空気をなかったことにして、瞬がいつもみたいに…
いつもの〝友達〟みたいに振る舞ってくれる。


あたしはその大きな背中の後ろについて行った。


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