シンデレラ★バレンタイン
「あー…ダメかも、俺。」

「な…なにが…っ…?」

「色々、抑えられそうにない。」

「え…?」


瞬の目が、〝友達〟の時とは違う。
…告白してくれた時に、あたしを追いかけてくれた時に、そして…


あたしを〝裸足のシンデレラ〟だと言ったときの目と同じ。


ずっと知ってた瞬ではなくて、あたしの知らない…瞬の目。


「…お前が俺のためにバレンタイン…用意してくれるとかさー…。
普通に嬉しすぎて、それだけでも抑え効かないっつーのに、二人きり…とか。
…無理。…ちょっとそばにいたかったけど、やっぱ帰る。数学頑張れ。」


瞬があたしに背を向けた。
その瞬間、あたしは瞬の制服の裾に手を伸ばしていた。


「…ま、待って!
ひ、一人じゃ数学できないよ!」

「…そっちかよ。追いかけて来てくれて嬉しーとか思って損したんだけど。」

「それだけじゃないもんっ!今、帰っちゃうって言われて寂しいって思ったの!だからっ…。」

「俺、真姫が嫌がること、すっかもしんねぇぞ?」

「え…?」

「真姫、俺が触ろうとすると…ビクってすんじゃん。
俺、触んないでいらんねぇよ、この空気じゃ。」


空気なら、あたしだってちゃんと感じている。
いつもとは違う、空気を。


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