シンデレラ★バレンタイン
「…あんまり遅くなると親から電話かかってくるけど?」

「だーいじょうぶ。ちょっとドライブってくらいにしとくから。」

「そう。」


彼の横顔を盗み見ると、ニコニコと屈託のない明るい表情を浮かべている。


「あぁーもうほんっと嬉しい!超嬉しい!その辺の公園に車止めて食べてもいい?」

「車内で食べると汚れるかもしれないわよ?」

「何作ったの?」

「ガトーショコラ。ちょっとボロボロいくかもしれないし。」

「んー…じゃ、俺んち行く?」

「え?」

「だいじょーぶ。なーんもしないよ。里穂と一緒に食べたいだけ。」

「別に何かされるなんて思ってないわ。」

「なんで?俺彼氏じゃん?」

「…そうだけど。でも、私の嫌がることはしないでしょう?」

「え、認めるの?」

「…?」

「彼氏だって、俺のことを認めるの?」


人通りの少ない公園のそばで、不意に車は止まった。
彼の目は確実に今、私にだけ向けられている。


彼の目が真っすぐである以上、私も真っすぐあるべきだろう。


「…認めるわ。」


〝すき〟と言えない自分から卒業する。





「…すき。貴也のこと、すき…なんだと思う。」


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