シンデレラ★バレンタイン
「…なんだと思う、って…ついちゃうの?」

「何が…本当の〝すき〟なのかとか…分からない、けど。それでも…。」


貴也の表情がその次の言葉を待っている。
私はすうっと小さく息を吐く。


「…バレンタインに、誰かに何かをあげたい、その人の笑顔が見たいなんて思ったの、あなたが生まれて初めてよ。」


笑顔も言葉も、触れる手も全て、とても正直でとても真っすぐで温かい。
そのそれぞれを、私は確かに大切だと感じていて。
そのそれぞれをはっきりと、すきだと…言える。


「うわー…なにそれ…めっちゃ可愛いんだけど。」

「は…?」

「じゅーぶん。俺、それだけでじゅーぶんだわ。
その言葉、一生忘れない。」



貴也の手がゆっくりと私の方に伸びてくる。
その手が頬に触れ、視線がぶつかった。


自然と重なる唇。
触れた温度が心地よくて、優しい。


唇が離れて目を開けると目の前にはちょっと潤んだ瞳の貴也。


「…な、なに…?」

「感動してきた…。」

「はい?」

「だって里穂が俺をすきとか嬉しすぎるっしょ!」

「…言葉にしないと…伝わらないもの、なんでしょう?」

「完全に伝わらないってことはないと思うけど、でも言葉にしてもらえた方がやっぱり嬉しい、かな。少なくとも俺は。
里穂は…どう?」

「え…?」


貴也の言葉の意図が上手く汲み取れず、訊き返す。

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