シンデレラ★バレンタイン
「だぁー…もう!俺のお姫様、いきなり素直になるからほんっとびっくりする!」

「…お姫様なんかじゃないわ、私。」

「分かってないなぁー里穂は。
女の子はみーんな誰かのお姫様なんだって。
里穂は…俺だけのお姫様だから、もう他の奴にはやんないよ?」


頬に触れた手が、異常に熱い。
私の髪に指を絡め、いつもとは少し違う眼差しで私を見つめる。


「…他の奴、なんて眼中にないわ。」

「あ、今ちょっとだけ声震えた?」

「震えてないっ!」

「ムキになるとこがますます怪しい…。」

「降りるわよ?」

「…いーよ?どこまで行っちゃっても絶対逃がさないから。」

「…すごい自信ね。自慢じゃないけど足は速い方よ?」

「偶然だけど俺も足は速いんだよねー。」

「そう。じゃあ…。」


私はシートベルトを外し、ドアを大きく開けた。
この甘ったるい空気は少し払拭したい。


ドアは開けたままで、私は冷たい空気の中に飛び出した。


…ふと、シンデレラのワンシーンが蘇る。


真姫には怒られてしまうかもしれないけれど、私、シンデレラは少しずるいと思っているのよ。


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