すれ違う恋の行方
『来て…くれたんだ…』


ちゃんと来てくれた秀に、あたしは思わず安堵のため息が出る。

だけど秀は少し複雑そうに答えた。


「だってお前…ほんとに俺が来るまで待ってそうだから…。
 暗い中、一人でこんなとこ待たせてらんねぇよ。
 前科もあるんだし…」


秀はあたしから少し距離を置いた場所でそう言った。


やっぱり秀は優しいな…。
こんなことになっても、あたしのことを考えてくれてる。


あたしはそんな秀が好きだった。



『あたし…』

「俺…」



あたしが話し始めると、それを掻き消すかのように秀が話し出す。


あたしは秀の話を黙って聞くことにした。

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