赤い狼 四
うん、ここはスルーしよう。
まさか棗まで昨日の話題をしてくるとは思っていなかった為、少しの間固まったけど
そ、そーいえばね!
と棗の質問を無視して視線を下に向ける。
う、上手く誤魔化せたと思う!
「あのね、それでね~私の友達がさぁ~」
なんとかそのまま話題を反らそうと話を続ける。頑張れ、稚春!
「もう凄いってもんじゃな「稚春。」な、何…?」
もう話題が反れたかな、と思って安心していると棗が真剣な表情をして私を見つめてきた。
ごくり、唾を呑む音が私の体に響く。
「あのさ、凄く聞きたいんだよね。」
「な、何を?」
「稚春も何を聞かれてるのか分かってるだろ?」
伏し目がちに言う棗。
…分かってるよ。棗は昨日、何で私が《SINE》に来れなかったのか聞いてるんだよね。
心配してくれてるのは分かる。
でも、何を言われても昨日の事だったら言えない。
口を固く結んだ。