赤い狼 四
パタン、と扉が閉まる音がしたと同時にため息を溢す。
"ひなちゃん"
さっきから頭の中でグルグルと回っている単語。
頭から離そうとすればするほど離れてくれない。
…正直なところ、《SINE》の皆が私に隠れて何かをしている原因が"ひなちゃん"なんだと分かって複雑な気分だ。
良かった。私が居なくてもその子が居るじゃん。
という
これから、この街を出ていく時に誰にも引き留められずに簡単に出ていけるという安心感と
何だ、私って《SINE》の皆にとって大した存在じゃないじゃん。
という
"ひなちゃん"に対しての劣等感と孤独感を抱いている。
せっかく、私の居場所が出来たと思ったんだけどなぁ。
寂しく思いながら膝を抱えて縮こまる。
すると、
「稚春。」
後ろからフワリ、と微かな煙草の匂いが私を包んだ。
これは、連の匂い。
「稚春。」
再度、私の名前を呼ぶ連に何?と言おうとした時、連が私の口を右手で塞いだ。
何。喋るなって事?
喋ろうにも喋れない私は黙って連の話の続きを待つ。