赤い狼 四
「ねぇ、稚春。」
だから何よ。と言ってやりたい。早く喋ってよ。
なかなか喋りださない連にイライラしてきた頃、連がさっきよりももっと私を抱きしめる力を強めた。
「俺は、稚春が大事。」
急に何を言ってるんだ。と思った。でも、何で今このタイミングで言ったのかって考えたら一つしかない。
たぶん連は私が弱ってるのが分かったんだろう。
だから多分、
「俺は稚春が大事。」
「うん。」
「俺は稚春が、大事だ。」
こんなに何回も恥ずかしい台詞を言ってくれるんだ。
本当に連は、優しい。
思わずぎゅうっと連の腕を両手で掴む。
うんうん、と頷きながら。
「稚春。」
「うん。」
「俺はずっと離れねぇ。」
最後の言葉には返事が出来なかった。
それは、泣いてしまったから。
連。私この時ね、私にも存在理由があるのかなって。私を大事って言ってくれる人が居るんだって。
連が居てくれて良かったって。
そう、思ったんだ。
連には笑ってありがとうしか言えなかったけど。
救われたんだよ。
―――この時、不覚にもドキッとしたのは私だけの秘密。