赤い狼 四
やっと机に並べた沢山のお菓子の封を開けて恋ばなに夢中な二人を見てフッと笑みを溢す。
そりゃあ知るわけない。だって、聞いたらこっちも教えるような流れにどうしてもなるし。
私の家の事は、友達の二人にでさえも教えられないから。
「いや、それがね、とんでもない男でさ!」
「それはないよね~。」
「だから真がしっかりしてそうな《SINE》の人達がいいのよ!」
「香も《SINE》の人達だったら大歓迎~!」
「そうよね!?やっぱりそう思うわよね!ねぇ、稚春!」
「は?」
実に名前を呼ばれて思考をストップさせる。
完全に自分の世界に行っていたらしい。最近、考え事が多くなった気がする。
はぁ、と実達には聞こえないように息を少し吐くだけのため息を溢す。
すると聞いてないと思ったのか実が、ねぇ、そうよね?稚春。ともう一度さっきと同じ質問をしてきた。
…な、何の話?
何を隠そう、さっきまで二人の会話そっちのけで違う事を考えていたから勿論、話の内容なんて一切聞いていない。