赤い狼 四
うん、まぁ話に集中しよう。
隼人が私の髪の毛を凄い力で掴んでる。
いててててっ。と言葉を漏らすと隼人が
脅しじゃねぇぞ、本当に分かってんのか?
と私の耳元で低く囁く。
うん、分かってるよ。分かってる。だから私の手汗がさっきから止まらないんじゃないか。
チラリと右の掌を確認する。
うん、やっぱり濡れている。
尋常じゃない手汗を確認した私は素直に口を閉じた。
すると、もう騒ぐ事がないだろうと確信した隼人は私の髪の毛から手を離す。
はらりと私の長い髪の毛が隼人の手から滑り落ちる。
それを合図にするかのように、棗が静かに口を開いた。
「話したくないならぃぃよ。でもね、俺等は稚春が昨日どこに居たのか気になって仕方がないんだよ。
稚春が俺等が側に居ない時に傷付いたりしてないか、とか
俺等が知らない間に稚春の身に何かあったら、とか…色々考えちゃうんだ。心配だから。」
棗が私を見つめて瞳を揺らす。
それを見て、私も瞳を揺らした。
心配してくれてるのは凄く嬉しい。
その気持ちだけでも十分幸せな気持ちになれるよ。