赤い狼 四
髪の上からでも隼人の冷たい手の温度を感じて泣きそうになる。
隼人の全てに自分の体が反応して泣きたくなる。
優しく触れる、その手に。
愛おしいものを見るかのような、その眼差しに。
痺れそうなほど甘い
「稚春…。」
その、声に。
「はや―――…」
――プルルル、プルルル…――
「………。」
「………。」
「…鳴ってるよ?」
「チッ、」
電話が鳴り続けている中、何の反応も見せずに私の頭を相変わらず優しい手つきで撫でている隼人の服の裾を引っ張ると、
隼人はあからさまに不機嫌な態度を見せて電話に出た。
……そんな盛大な舌打ちしなくても。
子供だな、とクスクスと笑いを堪える。
後で電話の人にタイミングが悪かった。って文句言えばいい話なのに。
そうは思ったものの根が優しい隼人には到底ムリな話だ、と早くもさっきの案はボツになった。
…―――それより。
電話が鳴って良かった。あの電話がなかったら隼人の名前を呼ぶところだった。
呼ぶわけには、いかないから。