赤い狼 四
呼んでしまったらせっかく蓋をしてた気持ちに気付いてしまう。
それだけは嫌だ。
自分が苦しくなるから。
誰かに本気になってしまったら後々、自分も傷付くし相手も傷付く。
それはもう最初から分かっているから。だから。
「ヤキモチ、だよね。」
隼人に抱きかけている感情は、気付いちゃ駄目。
私が惹かれていいような相手じゃない。
――――じゃあ何でこんなに胸が苦しいの?
知らないよ。
――――何でこんなに胸がきゅうって痛くなるの?
やめて。気付きたくない。
もう一人の自分が私に気付け、気付けと責め立てる。
私はそれを全部無視して―――そのまま、二度と開かないように、重い蓋をした。
そのまま電話をしている隼人に視線を向ける。
まだ電話は終わってないみたい。結構、長電話だなぁ…。
私の時とは全然違う、と少し腹がたつ。
私なんて30秒くらいだよ?それが、5分くらいも電話してるなんて。
ちょっと、ジェラシー。
何だよ~、と思いながら隼人の電話の内容を耳に入れる。