赤い狼 四
:初めての嘘
――プルルルル…――
「んー…。」
電話が、鳴っている。
モゾモゾと布団から顔を出して電話の人物を確認する。
でも、確認しなくても分かりきっている。
だって電話の人物はきっと、今日は振り替え休日だから私を朝早くに迎えに来て
私の家の前でイライラして待っているだろう人物なのだから。
「も…しもし。」
「遅ぇ。」
やっぱり、電話の人物はイライラしていた。
窓の外をソローと覗くと、何様、俺様、赤髪オオカミ隼人様が携帯を耳に当てて眉間に皺を寄せている。
うん、早く支度して家を出よう。
このままだとバイクでマンションに突進してきそうな勢いだ。
それを物語るように、ほら。
「早く来ねぇとマンションにバイクごと突っ込むぞ。」
普通の顔になっても消えなくなるんじゃないかと思う程、眉間に皺が刻まれている。
それに、なんかヤバい事を電話越しに呟いてる気がする。
うん、やっぱり早く支度しよう。
やっと覚醒してきた頭をブンブンと二回横に振り、《SINE》に行く支度をする。