赤い狼 四
馬鹿じゃねぇのか、と言ってやりてぇ。
お前の一番大事なもんはなんなのかって。
「なぁ、奏?」
煙草の灰を指でトントンと落としながら、今、電話し終えた奏の横顔を見る。
「何がだよ。」
すると、奏はあからさまに眉を顰めて煙草を取り出した。
それに続き、カチカチッと心地いい音が周りに響く。
でも、火がなかなか点かねぇみてぇで奏がチッと盛大な舌打ちを溢した。
「おい、銀。ライター。」
「はーいはい。」
イライラしてんなぁ、俺に当んねぇでくれよ。
やれやれ、とため息を溢しながら奏に俺のお気に入りのジッポを渡す。
それを無言で受け取り、素早く煙草に火を点けた奏は
「ムカつく。」
と一言、低い声で呟いた。
「なーにがそんなにムカつくんだよ。銀お兄さんに話してみなさいよ。」
「お前のその態度も癪に障る。」
「ひでぇな。」
ハハッ、と笑いを漏らす。
まぁ、奏がイラついてる理由は聞かねぇでも分かってるんだけどな。
「俺だって腹立つ。」
煙を口から出しながら空を見上げる。