赤い狼 四
「慕ってたもんな、奏は。」
「だって、俺を最初に助けてくれたのは誠也だった。」
「…そうだったな。」
悲しそうな、嬉しそうな、なんとも言えねぇ顔をして俯く奏に、いい奴だった。と呟く。
「誠也はあの糞女のせいで死んだんだっ…。」
ダンッ、と壁に拳を思いっきり叩きつける奏を見て顔を歪める。
妃菜ちゃんが殺したんじゃねぇけど、やっぱりアイツがした事は許されねぇ事だしな。
それに―――…
確かにアイツが俺らを騙したりしてなかったら誠也は死んでなかっただろーよ。
そう思うと悔やまれてならねぇ。
あの日の、事を。
――――――…
二年前。
隼人には弟が居た。
大狼 誠也
(おおがみ せいや)。
兄想いで仲間想いな、優しい、奴だった。
俺にも「銀さん、銀さん。」っつってなついてきてたな。
それに、頭が良くて勘が冴えてて、俺より一つ下なくせに何でもできる奴だった。
言った事はねぇが…アイツには敵わねぇ、そう思ってた。
人一倍、仲間想いなところも、いざとなったら頼りになるところも。全部。